断熱等性能等級とは
住宅を新築、増改築するにあたり多くの方が気にされるのが、暑さや寒さに強い家「高断熱の家」にしたいということです。
年々寒暖差が激しいことが増え、お家での生活をより快適に過ごしたいと思いますよね。
高断熱の家をつくるためには、断熱性能を向上させることが良いです。
断熱材、玄関ドア、サッシや気密性などさまざまな場所の性能をあげると断熱性能は向上します。
断熱性能:「建物からの熱の逃げやすさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」をみる指標
断熱性能を数値で表したのが、断熱等性能等級(断熱等級)です。
そもそも断熱等性能等級(断熱等級)とは、2000年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で定められた住宅の断熱性能を示す指標です。
断熱等級の数値が大きければ大きいほど、断熱性能が高くなります。
断熱等級はどのように振り分けられているといいますと、
日本を1~8の地域に区分し、それぞれに満たすべきUA値(ユーエー)とηAC値(イータエーシー)の基準値が定められています。
建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 国土交通省
UA値(外皮平均熱還流率):室内・室外間の熱の通りやすさを示す
ηAC値(冷房機の平均日射熱取得率):冷房期にどれくらい太陽の日射熱が住宅内に入るかを示す値
この数値が小さければ小さいほど、断熱性能が高く、省エネ性能が高いです。
断熱等級は現在1~7等級まであり、2025年4月からは断熱等級4が最低基準になります。
断熱等級 | 内容 |
断熱等級7 | HEAT20 G3レベル 等級4から40%の省エネ |
断熱等級6 | HEAT20 G2レベル 等級4から30%の省エネ |
断熱等級5 | ZEH水準 等級4から20%の省エネ |
断熱等級4 | 平成11年 次世代省エネ基準 |
断熱等級3 | 平成4年 新省エネ基準 |
断熱等級2 | 昭和55年 旧省エネ基準 |
断熱等級1 | 昭和55年基準に満たないもの(無断熱) |
地域によりUA値・ηAU値は異なり、富山県は5地域に区分され、5地域のUA値・ηAU値は以下の通りです。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
断熱等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | ー |
断熱等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | ー |
断熱等級5 | 0.40 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | ー |
断熱等級4 | 0.46 | 0.46 | 0.57 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | ー |
断熱等級3 | 0.54 | 0.54 | 1.04 | 1.25 | 1.54 | 1.54 | 1.81 | |
断熱等級2 | 0.72 | 0.72 | 1.21 | 1.47 | 1.67 | 1.67 | 2.35 | |
断熱等級1 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
5 | 6 | 7 | 8 | |
断熱等級7 | 3.0 | 2.8 | 2.7 | ー |
断熱等級6 | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 5.1 |
断熱等級5 | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 6.7 |
断熱等級4 | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 6.7 |
断熱等級3 | 4.0 | 3.8 | 4.0 | ー |
断熱等級2 | ー | ー | ー | ー |
断熱等級1 | ー | ー | ー | ー |
富山県での最低基準は UA値:0.87 ηAC値:3.0 になりますが、2030年には断熱等級5が最低基準になる予定のため、UA値:0.60 ηAC値:3.0 以下に目指していくことをおすすめします。
断熱等級を高くするためには、
・断熱材の厚みを厚くする、性能が高い断熱材を採用する。
弊社では、湿気や結露に強いフェノールフォームを採用しています。
・窓ガラスを日射熱を室内に入りにくくするLow‐eガラス、ガス入りを採用し、複層ガラス・トリプルガラスにする。
弊社では、LIXIL(TW)、YKKap(APW330)等を採用しています。
・気密性を高くする。
などの方法があります。
では、断熱性能を向上させることでどのようなメリット・デメリットがうまれるのでしょうか。
メリット
快適な室温を保ちやすくなる
断熱等級が高くなればなるほど、外部との熱の出入りが少なくなるため、室温を保ちやすくなります。
断熱性能が高い断熱材や窓で家中を覆うと、家全体が魔法瓶のような状態になります。
急激な寒暖差がうまれないため、ヒートショックを起こしにくくなります。
光熱費を抑えられる
外部との熱の出入りが少ないということは、室温が変わりにくいため、暖房や冷房を使用する機会が少なくなります。
断熱等級4から5にすると20%の省エネ効果が得られるということは、等級4で年光熱費が36万円であった場合、等級5にすると29万円ほどに下がるという計算になります。
補助金・ローン控除などの優遇が受けられる
住宅ローン控除は、省エネ基準に適合していないその他の住宅において一切受けられなくなりました。
省エネ基準適合以上でないと住宅ローン控除がありません。
さらにZEH水準省エネ住宅や長期優良住宅にすると借入限度額が上がるため、控除率が上がります。
補助金では、2024年2月現在においては住宅省エネ2024キャンペーンというものがあります。
補助対象の断熱工事、玄関ドアや窓を採用することで補助金を受けられます。
デメリット
建築費用が高くなる
性能が良い断熱材や窓を採用するとなると必然的に価格が高くなります。
住宅の床面積、窓の数、防火地域などさまざまな条件により価格は上昇します。
費用が上がった分は、補助金や住宅ローン控除で少しでも取り戻すという方も多くいます。
性能、構造、仕上げ材などどこに費用をかけたいかなどまとめておくと良いでしょう。
暖かくない、涼しくないと感じる場合がある
断熱性能が良い家にしたものの想像していたよりも暖かくない、涼しくないと感じることもあります。
暖かさや涼しさの感覚は人それぞれのため、良い性能の断熱材や窓を採用しても、快適に過ごしにくいと感じる方もいます。
住む前に数値で判断しなければならないため、判断が難しいところです。
トリプルガラスの窓が重い
断熱性能をよくするために窓は一番性能が良いトリプルガラスを採用しますが、開閉する際とても重たく感じます。
掃き出し窓(テラス窓)はトリプルガラスなうえガラス面積が大きいため、開けるのに一苦労します。
オプションで開けやすいように大きな把手を付ける方もいますが、採用する前にショールーム等で重さ等を確認すると良いでしょう。
メリット・デメリットの双方を活かしながら、断熱等級をどこまで向上させるかは建築費用や生活リズムなどの全体的なバランスを見て決めていきたいですね。